そのAGA治療本当に大丈夫? ~続・副作用の調べ方について~

先日副作用を調べるには海外の論文・レポートを拾うのがとても重要です、と書いたら英語がダメな人はどうすればいいのですか?と質問をもらいました。

2つ役に立ちそうな答えを用意しましたので今日はそれを書いてみたいと思います。

全部自己責任だから全部自分で! が基本です!

PMC(論文アーカイブ)を活用するために最低限の英語を!

まず一つは、AGAのキープレイヤーの英語だけでも覚えておくということです。

やっぱり英語じゃないか!

と言われてしまいそうですが、そこは少し堪えてもらってどうやって知りたい情報にたどり着けそうか、触れてみます。

例えばAGAの最重要プレイヤーたちを英語にするとこんな感じになります。
 
 
●フィナステリド→Finasteride
●プロペシア→Propecia
●ミノキシジル→Minoxidil
●副作用→side effects/adverse effects
 
 

せめてこれだけも知っておけば全然違います。

僕は、前回の記事でアメリカの国立生物工学情報センター (NCBI)が運営するPMC(生物医学・生命科学の論文のアーカイブを見ることができる)から論文を拾っていると書きましたね。

そこの検索窓に「Finasteride side effects」と打てば前回紹介した女性化乳房の事例を拾うことができます。

タイトルはそのままズバリ
「Finasteride induced Gynecomastia: Case report and Review of the Literature」
です。

「Gynecomastia」が女性化乳房のことです。

「induce」は「誘因となる」「誘発する」といった意味のある単語です。

主要プレイヤーだけは押さえておいて、タイトルをずっと閲覧していくだけでもかなり意味があります。

ほとんどの論文はタイトルだけで何が書いてあるかわかるからです。

タイトルの中にあるわからない単語だけネットで調べればいいわけです。

書いてあることが見えてくるはずです。

PMCにはほかにも

「Finasteride treatment and male breast cancer: a register‐based cohort study in four Nordic countries」

というものも見ることができます。

これは、フィナステリドと男性の乳がんの関係を調べた「コホート研究」ですね。

「in four Nordic countries」で北欧4か国(=ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド)です。

この4か国で大規模な疫学調査を行った結果が書いてあるわけです。

コホート研究というのは、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団(この場合はフィナステリドの服用があったかなかったか)を一定期間追跡して病気などの発生率を比較する観察的な研究のことです。

タイトルでまず、ここまでわかるということです。

ちなみに、この結論の部分を抜いてみるとこんなことが書いてあります。日本語は僕がつけています。
 
 

結論として……

In conclusion, a significant association between dispensed finasteride and MBC was identified. However, due to limited data for adjustment of potential confounding and surveillance bias in the present study, further research is needed to confirm these results.
結論としては、フィナステリドの服用と男性乳がんのリスクとの間には有意な関係が認められる。ただし、この研究では潜在的交絡因子と監督バイアスの調整という面でデータが限られているため、こうした結果を確定させるにはさらなる調査が必要である。
 
 

フィナステリドには、前立腺肥大の治療薬プロスカー(Proscar=5mg)とあなたが大好きな男性型脱毛症の治療薬プロペシア(1mg)がありますね。

男性型脱毛症の治療薬であるプロペシアだけを調べた調査ではないということにまず注意が必要になりますが、乳がんとの関係性が認められたとしているわけです。

医学論文というのは僕のブログのように構成がめちゃくちゃではないですから、導入があって、結論が必ずあります。

だから、conclusion(結論!)という英語も知っておくと便利です。

上の引用でも「In conclusion」と書いてあります。

「結論としては」ということです。

結論としてはフィナステリドと乳がんの関係性が認められますよ(ただし書き付きで)ということです。

ネットで見ることができるフィナステリド(商品名=プロペシア)の副作用は大抵

軽微なものなので心配なし!

で終わりです。

しかも、その副作用の具体的な中身に関しては、僕が目にする限りプロペシアが認可された当時のものから更新されていません。

情報が更新されていなのなら、自分から調べるしかありません。

今見たように、少し海外の論文を拾うだけでどうも、そんな体に優しい薬ではないとすぐにわかるわけです。

最低限、AGAのキープレイヤーたちを英語でなんと表すのか頭に入れて、PMC(アメリカの国立生物工学情報センターが運営するネット上で検索できる論文アーカイブ)から論文を拾うこと。

これがまず第一の方法です。

J-STAGEで日本語の論文を拾ってみる

では二つ目は何かというと、J-STAGEを活用してみる、ということです。

J-STAGEというのは日本で発表される科学技術情報を集めたところです。

日本語だと「科学技術情報発信・流通総合システム」だそうです。

J-STAGEのホームページから自分自身を説明している概要を抜いてくるとこう書いてあります。
 
 

J-STAGEとは

国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームです。J-STAGEは、日本から発表される科学技術(人文科学・社会科学を含む)情報の迅速な流通と国際情報発信力の強化、オープンアクセスの推進を目指し、学協会や研究機関等における科学技術刊行物の発行を支援しています。
現在J-STAGEでは、国内の1,500を超える発行機関が、3,000誌以上のジャーナルや会議録等の刊行物を、低コストかつスピーディーに公開しています。
 
 

ここでは薬の症例報告などを含む様々な論文を無料で見ることができます。

フィナステリドの関連で言えば
「男性型脱毛症用薬フィナステリド服用中に若年性脳卒中を発症した2症例」
という「症例報告」が拾えます。

そもそもこういう症例があること自体あなたは知っていましたか?

僕はまったく知りませんでした。

脳卒中とはちょっと出てこないんじゃないかなと思います。

ところが、このレポートをよく読んでみると途中でこう書いてあります。
 
 

論文からの引用です

フィナステリド服用中の血栓症発症は,PMDAへは,本2 症例を併せて14症例の報告がある(Table 1).脳卒中が4例, そのうち脳静脈洞血栓症2例,脳梗塞2例,急性心筋梗塞が 6例,その他の血栓症が4例であった.年齢は30~50歳代 の男性で,服用期間は1週間~6年と様々であった.ミノキ シジル併用例は症例2をふくめ3例の報告がある.症例2は 内服薬であったが,その他2例は外用薬,内服薬のいずれか が不明であった.脳卒中で頭痛をともなう症例は本報告の2 症例のみだったが,PMDA報告に頭痛の合併が記載されて いない可能性もある.
 
 

PMDAというのは医療品医療機器総合機構(=Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)というところです。

ここに14例の血栓症の症例報告があるということです。

血栓症というのですから、血管内に血栓ができてしまうということですね。

引用した患者の報告の例の1例は、フィナステリドとミノキシジルの内服を併用していたという人の例です。

ファッション感覚で薬を服用していて、たまたまうまくいったから、というただそれだけの理由で他人に勧めているような人もいますが、これは論外ですね。

そもそも、前立腺肥大として使われていた薬が結果としてハゲにも効いた、というだけの話です。

くじ引きに当たればいいですが、外れて脳梗塞になったなんて本当にシャレになりません。

このブログで何度も繰り返してきたことですが、男性型脱毛症というのは、疾患ではありません。

英語ではandrogenetic alopeciaです。

つまり男性の脱毛(症)だということです。

「毒をもって毒を制す」その元の毒がそもそもないのに、薬を使うというのはかなりアクロバティックな考えた方だと言えます。

そもそもくじを引くのかどうかも自分で考えること。

これは鉄則です。

今日の副作用を調べるコツの二つ目は「J-STAGE」で論文を拾ってみるということでした。

これは日本語だから問題ありませんね。

今日はここまで!

●ミノキシジルの副作用についてはこちら!

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