
ハミルトンの実験によってわかったこと
男性型脱毛症はジヒドロテストステロンという男性ホルモンが関係していると言われています。ジヒドロテストステロンはテストステロンが「5α-還元酵素」の働きによって変化したものです。このジヒドロテストステロンが男性ホルモン受容体と結合すると脱毛シグナルが出て髪が成長する前に抜けてしまいます。
一応こうしたものが今、男性型脱毛症のメカニズムとして説明されていることです。
男性型脱毛症の発症に男性ホルモンと遺伝が関与していると初めに実証したのがアメリカの解剖学者ハミルトンです。ハミルトンがした実験は思春期前後に去勢された男性にテストステロンを投与するというものです。観察された結果は次のとおりです。
2、去勢された時点ですでに脱毛がはじまっていた人は去勢によって脱毛が止まったもののテストステロンの投与によって再び脱毛が進行した
去勢というのは金玉(睾丸)を取って生殖機能をなくしてしまうことですね。テストステロンは金玉で多く作られることがわかっています。
去勢されている状態では脱毛が止まり、男性ホルモンを投与した途端に脱毛が始まったということであれば、当然男性ホルモンが原因ということになります。それから家系に男性型脱毛症がいる人が脱毛したということならば、今度は遺伝も関係してくるということになります。遺伝と男性ホルモンが深くかかわっていると実証できたということです。

薬による治療以外は邪道?
このハミルトンの実験からさらに、ジヒドロテストステロン(5α-還元酵素の働らきによってテストステロンが変化したもの)が男性ホルモン受容体と結合して脱毛シグナルを起こすとわかってきました。
今のハゲ治療の「前線」にある、フィナステリド(商品名プロペシアなど)という薬はこの「5α-還元酵素」の作用を妨げる役割をします。ジヒドロテストステロンが悪さをするからこの産出を抑えてしまえばいいというのが理屈です。
そこに副作用に多毛症が見られた、ミノキシジルの内服が加われば現在大抵の皮膚科で行われている「治療」が完成します。
ハゲになってしまうメカニズムもわかっていて、それに対応する薬もあるのならもちろん誰にとっても万々歳です。
ただし、おそらくそれほど、ことは単純ではなく、小躍りして薬に飛びつくには注意が必要だということになりそうです。

男性型脱毛症の遺伝子を特定した? イギリスの論文について
あなたは2017年に発表された「Genetic prediction of male pattern baldness」(※このタイトルで検索すればネット上で論文を見ることができます)というエディンバラ大学(イギリス)の論文をご存知でしょうか?
これはエディンバラ大学(The University of Edinburgh)の認知老化・認知疫学研究センターが英国バイオバンクに登録されている52000人超のデータを使用して脱毛に関係する遺伝子を調べたものです。結論として、重度の脱毛に関連する287の遺伝子を特定できたとしています。
さっきハミルトンの実験から、「男性ホルモン」と「遺伝子」が関係していることがわかったということを書きました。さらにジヒドロテストステロンが関係しているということもその後の「科学的な研究」によってわかってきています。ただし、それを持ってして脱毛の全容を解明した、ということではもちろんありません。
「男性ホルモン」と「遺伝子」が関係していると言われれば、「なるほど、そうか!」となります。ただしその遺伝子とは何を指していて、また脱毛とどう関係しているのか、誰もまだ説明できていません。
要するにあなたがなぜハゲたのか、一方で僕はなぜまだハゲていないのか、を説明できる人は誰もいないということです。
ここを勘違いすると、全容が解明できているから、だから「薬」を用いれば男性型脱毛症が改善するんだ、という最もらしい説明を真に受けてしまうわけです。
2017年に行われた調査の結論部分に記されているのは、「まだ特定の個人がハゲるかどうかの予測はできない」ということと「さらなる調査、研究によって男性型脱毛症の遺伝的構造の理解が深まる」ということです。2017年に行われた調査以上の大規模なものがそれから実施されてさらに遺伝子の特定が進んだという話をあなたは聞いたことがありますか?
寡聞ながら僕はまだ知りません。もし、そうしたものがあれば日本でもきっと大きなニュースになっているのではないでしょうか。
繰り返しですが、男性型脱毛症の全容というのは決して解明されていません。つまり「薬」を使うということ自体、くじでも引いているようなものだと、理解しておく必要があるということです。なにかの偶然が重なってあなたに効くかもしれないし、そうではないかもしれないというのがきっと正しい言い方です、。

アデランスが調べた薄毛率
カツラメーカーのアデランスが男性の薄毛率を調べた結果を2009年に発表しています。以前も紹介しましたが、もう一度引用してみます。
チェコ(プラハ) | 42.79% (158万人) |
---|---|
スペイン(マドリード) | 42.60%(650万人) |
ドイツ(フランクフルト) | 41.24%(1263万人) |
フランス(パリ) | 39.10%(787万人) |
アメリカ(NY/LA/シカゴ) | 39.04%(4027万人) |
イタリア(ミラノ) | 39.01%(874万人) |
ポーランド(ワルシャワ) | 38.84%(505万人) |
オランダ(アムステルダム) | 37.93%(216万人) |
カナダ(モントリオール) | 37.42%(441万人) |
イギリス(ロンドン) | 36.03%(760万人) |
ロシア(モスクワ) | 33.29%(1623万人) |
オーストラリア(シドニー) | 30.39%(208万人) |
メキシコ(メキシコシティ) | 28.28%(811万人) |
日本(東京) | 26.05%(1293万人) |
中国(香港) | 24.68%(61万人) |
シンガポール(シンガポール) | 24.06%(41万人) |
タイ(バンコク) | 23.53%(476万人) |
マレーシア(クアラルンプール) | 22.76%(152万人) |
台湾(台北) | 22.59%(175万人) |
韓国(ソウル) | 22.37% 337万人 |
中国(上海) | 19.04%(8876万人) |
出典:株式会社アデランス「世界の成人男性薄毛率」調査結果より 2009年発表(調査期間:1998~2008年)
日本は世界のなかで下位に位置していますが、アジアの中ではトップですね。アデランスはこうした調査を1982年から2009年まで続けています。調査開始の1982年当時日本の薄毛率は約16%だったそうです。1990年代に20%を超え、2009年時点で約26%です。この数字の跳ね上がり方からすれば、2020年時点ですでに30%を超えている可能性もありそうです。
問題はこの薄毛率の変化です。この「成長」はなぜ起こったのでしょうか?そもそも
男性型脱毛症の人の割合は昔も今も変わっていないとする意見をよく目にします。だとすると、この増えた分の人は昔と今の「生活環境」の違いが影響した可能性が高いということになります。つまりよく言われるように欧米型の食生活や、ストレス過多の生活、深夜型の生活習慣、運動不足の習慣などがあなたをハゲさせた可能性があるということです。
また、男性型脱毛症の人が単に増えただけということであったとしたら、それならそれで、男性型脱毛症というのは様々な要因が絡んでいる、という話になるだけです。
いずれにしろ、今現在、あなたが受けている「科学的な説明」だけですべてを断じることなどできないということになります。

薬一択は本当?
このブログではさんざん触れてきたことですが、薄毛の治療薬には必ず副作用があります。安全だと言われているフィナステリドに関しても「男性型脱毛症用薬フィナステリド服用中に若年性脳卒中を発症した2症例」などという恐るべき報告があり、またアメリカではすでに1100件以上の訴訟がこの薬に関して起こされています。国立研究開発法人科学技術振興機構が運営するサイトでは誰でも副作用の報告に触れることができます。そこにはとても軽いとはいえない症状が羅列されています。ポストフィナステリドシンドロームというフィナステリドをやめてなお続く症状というのも報告されています。
ミノキシジルの内服にいたっては本来降圧剤として使用されているものです。ハゲの薬として認可している国はどこにもありませんし、またアメリカでは降圧剤としての使用に関しても「Boxed Warning」という強い警告を出してその使用に対して注意喚起をしています。
僕は、親父はハゲ、祖父もハゲ、母方の祖父もハゲという華麗なるハゲ一族の出身です。ですのでハゲ・薄毛に関しては人一倍の関心を払ってきました。30代後半にうつ病になり、その後一気に額が1㎝弱後退するという恐怖を経験したときは「薬」の使用を本気で考えたこともあります。
でも最終的に思いとどまったのは、男性型脱毛症という「症状」に対して薬を使うことに違和感があったからです。「疾患」ではない「症状」に薬を使うということは、制すべき毒がないのにも関わらず、毒だけを体に入れているということです。
フィナステリドやミノキシジルはとにかく飲み続けることが条件の薬です。体にどんな変化があるのか心配して使い続けるよりも、シャンプーを変え、食事を変え、運動しない、というダメな習慣を変えるということの方がよっぱど健康的でしかもある程度理に適った方法だと思いますがどうでしょうか。
僕は、髪は血余と信じてその都度生活習慣の見直しをしてきました。今43歳ですので、この先こうした習慣を貫いていけばなんとか今の自分の父親の状態(波平型から完全に一休和尚になりました)にはならずに済むのではないかと思っています。
少なくとも薄毛は病院で治療をする時代です、という言葉を真に受けて、副作用だけをもらってくるなどという間の抜けたことだけだは避けられそうだ、と思っています。

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